構造化面接とは、質問項目と評価基準を事前に設計し、候補者を共通の手順で評価する面接手法です。
面接官ごとに質問や判断が異なる企業では、候補者の違いではなく、面接官の違いが選考結果に影響します。構造化面接は、この属人性を抑え、採用基準に沿った判断を行いやすくします。
ただし、全員に同じ質問をするだけでは機能しません。採用基準、質問、深掘り、採点基準、面接官の運用までを一体で設計する必要があります。
| 先に結論 構造化面接を成功させる条件は、質問の統一だけではありません。 先に、職務成果、評価項目、採点基準を決めます。その基準に沿って、質問と深掘り方法を設計します。 一次面接や大量採用では、構造化の度合いを高めると評価を揃えやすくなります。一方、専門職や管理職では、共通質問に自由な深掘りを加える半構造化面接も有効です。 |
この記事でわかること
- 構造化面接と、ほかの面接手法との違い
- 構造化面接のメリットとデメリット
- 評価項目別の質問例と深掘り方法
- 5段階の評価基準表を作る方法
- 構造化面接を導入する7つの手順
- 形式的な面接にしないための運用方法
構造化面接とは
構造化面接とは、あらかじめ質問項目と評価基準を決め、すべての候補者を共通の基準で評価する面接手法です。
海外の公的機関による定義の一例として、米国人事管理局(OPM)は、候補者の過去の行動や、仮定の状況における対応を体系的に確認する手法と説明しています。候補者に共通の質問を行い、あらかじめ設定した尺度で評価することが基本です。(*1)
構造化面接は、単なる面接台本ではありません。質問項目だけでなく、確認する情報や評価基準まで設計し、面接官による情報収集と判断のばらつきを抑える仕組みです。
非構造化面接・半構造化面接との違い
面接は、質問や評価方法をどこまで固定するかで、3つに分けられます。
| 面接手法 | 質問 | 深掘り | 評価方法 | 向いている場面 |
| 構造化面接 | 原則として共通 | 範囲を事前に決める | 共通基準で採点 | 一次面接、大量採用 |
| 半構造化面接 | 必須質問は共通 | 候補者ごとに追加 | 共通基準を中心に評価 | 専門職、管理職 |
| 非構造化面接 | 面接官が決める | 自由 | 総合的な印象に傾きやすい | 面談、補足確認 |
構造化の度合いが高いほど、候補者同士を比較しやすくなります。一方で、自由に話題を広げる余地は小さくなります。
実務では、すべてを固定する必要はありません。合否に関わる項目は構造化し、魅力付けや相互理解では自由な対話を残せます。
同じ質問をするだけでは不十分
同じ質問を用意しても、採点基準が曖昧なら評価は揃いません。
たとえば、「困難を乗り越えた経験」を全員に質問したとします。ある面接官は成果を重視し、別の面接官は話し方を重視する場合があります。
構造化面接では、質問ごとに確認する項目を決めます。高評価・標準・懸念に該当する行動も定義します。質問、確認ポイント、深掘り、採点基準がつながって初めて、評価を標準化できます。(*4)
構造化面接のメリット
構造化面接のメリットは、評価の一貫性、公平性、再現性、改善可能性の4つです。
面接官による評価のばらつきを抑えられる
共通の質問と評価基準を使うと、面接官の着眼点を揃えやすくなります。
非構造化面接では、面接官の関心によって質問が変わります。候補者ごとに取得する情報も異なるため、比較が難しくなります。
構造化面接では、同じ評価項目の情報を集めます。面接官が異なっても、評価シートに残す内容を揃えやすくなります。
ただし、質問と評価基準を用意するだけで、評価差がなくなるわけではありません。面接官同士で採点例を確認し、基準の解釈を揃える必要があります。
適性と能力に基づく選考を行いやすい
構造化面接は、職務と関係のない印象が評価に入り込むことを抑えます。
厚生労働省は、採用選考を適性と能力に基づいて行うよう示しています。本籍や家族、宗教など、職務と関係のない事項は把握せず、採用基準に含めないことが原則です。(*2)
質問項目を事前に定めれば、不適切な質問が出るリスクを下げられます。共通の質問表は、公正な採用選考の考え方を運用に落とし込む手段になります。(*3)
面接官の経験が浅くても進めやすい
構造化面接では、質問、確認ポイント、深掘り例を用意します。
経験の浅い面接官でも、何を確認すべきかを見失いにくくなります。評価コメントも、項目ごとに事実を残す形式に統一できます。
ただし、質問表を配るだけでは不十分です。質問の意図、深掘り方法、候補者への接し方も研修します。
面接データを改善に使いやすい
評価項目と採点方法を揃えると、面接結果を比較できます。
一次面接の評価と、後続選考の評価を照合できます。差が大きい場合は、質問や採点基準に問題がある可能性があります。
通過率、評価差、辞退率、入社後評価を確認します。その結果を基に、質問と評価基準を更新します。
構造化面接のデメリットと対策
構造化面接には、設計工数、柔軟性の低下、候補者体験の悪化、評価点への過信という課題があります。
質問と評価基準の設計に工数がかかる
構造化面接は、導入前の準備が必要です。
採用要件が曖昧な企業では、現場と人事で求める人物像を整理します。その後、職種別の評価項目、質問、採点基準を作ります。
最初から全職種へ導入する必要はありません。採用数が多い職種の一次面接から始める方法が現実的です。
候補者ごとの深掘りが難しくなる
質問を固定しすぎると、候補者固有の経験を確認できない場合があります。対策は、自由質問をなくすことではありません。必須質問と、回答に応じた追加質問を分けます。
追加質問は、事実、役割、判断、行動、結果の範囲で定めます。専門職では、半構造化面接を採用する方法もあります。
面接が機械的になる場合がある
質問表を読み上げるだけでは、候補者に冷たい印象を与えます。構造化する対象は、評価に必要な情報と採点方法です。相づちや会社説明まで画一化する必要はありません。
面接冒頭で進め方を説明します。後半には、会社説明と逆質問の時間を確保します。
点数を客観的な事実と誤認しやすい
評価シートに数値を入れても、その数値が正しいとは限りません。
採用基準が職務成果とずれていれば、誤った基準を正確に運用するだけです。面接官が印象で点数を付ける場合も、形式だけの構造化になります。
評価コメントには、点数の根拠となる回答を残します。事実を記録してから、項目ごとに採点します。
構造化面接で使う2種類の質問
構造化面接では、行動質問と状況質問を中心に設計します。
行動質問は過去の経験を確認する
行動質問は、候補者が過去に取った行動を確認する質問です。
「課題を解決した経験を教えてください」など、実際の経験を起点にします。回答は、STARの順番で深掘りします。
- Situation:どのような状況だったか
- Task:本人にどのような課題があったか
- Action:本人が何を考え、何をしたか
- Result:どのような結果になったか
成果だけでなく、候補者本人の役割と判断を確認します。「チームで達成した」という回答では、本人の担当範囲を尋ねます。
状況質問は仮定の場面で判断方法を見る
状況質問は、職務上起こり得る場面を提示する質問です。たとえば、顧客から苦情を受けた場面を提示します。回答から、情報収集、優先順位、共有、判断基準を確認します。
状況質問では、候補者が未経験の場面でも判断方法を確認できます。一方、理想的な回答を準備しやすい点には注意が必要です。
「似た経験はありますか」と続けます。過去の行動と照合すると、回答の具体性を確認できます。
評価項目別の質問例
質問は、評価項目とセットで設計します。以下は、職種を問わず使いやすい例です。
| 評価項目 | 起点となる質問 | 深掘り質問 | 確認ポイント |
| 課題解決力 | 業務上の問題を解決した経験を教えてください | 原因をどう捉えましたか | 分析、判断、実行、検証 |
| 主体性 | 指示を待たずに行動した経験を教えてください | なぜ動く必要があると考えましたか | 問題発見、自律的な判断 |
| 協働力 | 意見の異なる相手と成果を出した経験を教えてください | どのように合意を作りましたか | 傾聴、調整、役割分担 |
| 実行力 | 厳しい期限の目標を達成した経験を教えてください | 優先順位をどう決めましたか | 計画、進捗管理、修正 |
| 学習力 | 未経験の業務を習得した経験を教えてください | 学ぶ内容をどう決めましたか | 学習計画、実践、振り返り |
| 顧客志向 | 顧客要望と会社方針が合わなかった経験を教えてください | 何を優先し、どう説明しましたか | ニーズ理解、判断、説明 |
質問文は、職務で求める行動に置き換えます。営業職とエンジニア職では、同じ課題解決力でも場面が異なります。求人票や現場へのヒアリングを基に、質問を具体化します。
構造化面接の評価基準表
評価基準は、抽象的な能力名ではなく、回答から確認できる行動で定義します。
5段階評価の例
以下は、「課題解決力」を5段階で評価する例です。
| 点数 | 評価の目安 | 回答で確認する内容 |
| 5 | 期待を大きく上回る | 原因を構造化し、複数案を比較し、周囲を巻き込み、成果も検証した |
| 4 | 期待を上回る | 原因を分析し、自ら解決策を実行し、明確な成果を出した |
| 3 | 期待水準 | 問題を把握し、必要な情報を集め、妥当な手順で対応した |
| 2 | 一部不足 | 対応経験はあるが、本人の分析や判断を確認できない |
| 1 | 懸念が大きい | 他者の指示が中心で、本人の判断や行動を確認できない |
「優秀」「論理的」などの表現だけでは、解釈が分かれます。回答で確認できる行動と事実を基準にします。
合格に必要な最低点も決めます。ほかの項目で補える条件と、補えない条件を分けます。
評価コメントは事実と判定を分ける
評価コメントは、次の3つに分けます。
- 事実:候補者が話した状況、役割、行動、結果
- 解釈:回答が評価項目とどう関係するか
- 判定:評価点と、追加確認が必要な事項
「受け答えが良く、優秀そう」では、判断を検証できません。
「顧客解約の原因を利用ログから特定した。3部署と改善を実行した。分析と巻き込みは確認できた。効果検証は未確認。課題解決力4点」と記録します。
構造化面接を導入する7つの手順
構造化面接は、職務成果から逆算して設計します。
1.採用後に求める職務成果を定義する
最初に、採用する人物が入社後に何を達成すべきかを決めます。
「コミュニケーション力が高い人」では不十分です。「既存顧客を担当し、関係部署と契約更新を進める」のように、職務と成果で表します。
2.評価項目と優先順位を決める
職務成果に必要な能力を、4〜6項目程度に絞ります。各項目を、必須条件、加点条件、入社後に育成できる条件へ分けます。選考段階ごとの評価項目も決めます。
3.評価項目ごとに質問を作る
一つの評価項目に対して、起点となる質問を1〜2問作ります。
「主体性はありますか」ではなく、具体的な行動を尋ねます。「求められる前に課題を見つけ、行動した経験」を確認します。
4.追加質問のルールを決める
構造化面接でも、回答の深掘りは必要です。
追加質問は、状況、役割、行動、判断理由、結果、学びの範囲で用意します。候補者ごとに全く異なる論点へ進まないようにします。
5.評価基準と合格ラインを作る
質問ごとに、何を確認できれば何点かを決めます。必須項目には最低点を設定します。総合点が高くても、必須項目が基準未満なら追加確認を行います。
6.面接官研修と評価合わせを行う
面接官研修では、質問だけでなく、採点の練習を行います。同じ模擬回答を複数人で採点します。点数が分かれた理由を確認し、基準の解釈を揃えます。
Google re:Workでも、面接担当者のトレーニングや、面接スコアの相違点を確認する方法を紹介していますので興味ある方は参考にしてみて下さい。(*5)
7.試行運用して改善する
本格導入の前に、少数の面接で試行します。面接時間、回答の差、面接官間の評価差を確認します。後続選考と評価がずれる場合は、質問か採点基準を見直します。
構造化面接で起こりやすい失敗
構造化面接は、形式を整えるだけでは成果につながりません。
| 失敗例 | 起こる問題 | 対策 |
| 人物像が抽象的 | 面接官ごとに解釈が変わる | 職務上の行動へ置き換える |
| 評価項目が多すぎる | 各項目を深掘りできない | 選考段階ごとに項目を分ける |
| 深掘り量が異なる | 候補者を公平に比較できない | 必須の追加質問を決める |
| 最後は直感で決める | 評価基準が形骸化する | 懸念の根拠を回答から示す |
| 見極めだけに偏る | 候補者の志望度が下がる | 会社説明と逆質問を確保する |
特に注意したいのは、総合的な印象で評価を上書きすることです。
直感的な懸念がある場合は、どの回答から生じたかを言語化します。既存の評価項目にない論点なら、次回の面接設計に加えるかを検討します。
構造化面接が向いている企業
構造化面接は、面接官が複数いる企業や、同じ職種を継続して採用する企業に向いています。
次のような課題がある場合は、導入を検討する余地があります。
- 面接官によって通過率が大きく異なる
- 候補者を選考通過とした理由を説明できない
- 評価コメントが印象や感覚に偏っている
- 面接官の育成が追いついていない
- 一次面接の実施件数が多い
- 面接結果を後から検証できない
一方、経営幹部や新規事業の責任者など、採用時点で職務が固まっていないポジションでは、すべての質問を固定することが難しい場合があります。
その場合は、共通して確認する評価項目と質問だけを決めます。候補者の経歴や回答に応じて深掘りする、半構造化面接を取り入れる方法もあります。
まとめ|構造化面接は質問と評価を一体で設計する
構造化面接とは、候補者全員に同じ質問をするだけの面接ではありません。
まず、採用後に求める職務成果を明確にします。そのうえで、評価項目、質問、深掘り方法、採点基準を一体で設計します。面接官同士で評価基準の解釈を揃えることも必要です。
一方で、すべての採用に完全な構造化面接が適するわけではありません。一次面接や大量採用では構造化の度合いを高め、専門職や管理職では半構造化面接を取り入れる方法があります。
自社の採用目的や職種に合わせて、共通化する部分と、柔軟に深掘りする部分を決めることが、構造化面接を機能させるポイントです。
参考資料
- (*1)米国人事管理局(OPM)「Structured Interviews」
- (*2)厚生労働省「公正な採用選考の基本」
- (*3)厚生労働省「事業主の皆様へ 採用選考の具体的な方法」
- (*4)Google re:Work「構造化されたプロセスと成功基準を策定する」
- (*5)Google re:Work「面接担当者をトレーニングする」
監修者
小林 幸嗣
株式会社NODIA 代表取締役新卒で株式会社インテリジェンスに入社。転職サイト「doda」の立ち上げ期に法人営業としてキャリアをスタートし、その後、法人営業に加えてマーケティング・営業企画・商品企画部門のマネージャーを歴任。プロダクト開発組織において100名超の組織マネジメントを担い、「doda Recruiters」や地方創生プロジェクト等の立ち上げを経験。2018年に株式会社コーナーに取締役COOとして参画し、ビジネスサイド全体を管掌。2026年に株式会社NODIAを設立。